2006年 01月 15日
こころの旅…その6
滝壺までは、ちょっと無理かな?行こうと思えば行けたけど、無理はしないでおこう。
足元の流れは水しぶきをあげて、急峻な狭い岩場を渦を巻くように流れていく。 飛び散った飛沫が岩にかかり、氷となって結晶していく。 滑らかな表面と、幾重にも重なる裏側と、不思議な造形物だった。 張り出した氷の内側を勢い良く流れていく水。表面はとろりと滑らかな氷… 氷は陽射しを受けて美しく輝く。 岩とその上を覆う透明な氷の内側を、とろとろと生き物のように水が伝い行く。 おもしろい現象なのだけど、写真には上手く写らなかった。 流れの上に張った薄氷は、幾重ものひびが走りモザイク模様。 さらさらと流れに揺れて、いまにも崩れて消え去っていきそうだ。 儚さと美しさと、厳しさと、厳かな自然の在り様を声にならない氷の声が物語っていた。 厚く張ったモザイク模様も、端からキラリンと崩れて氷のかけらが離れていく。 流氷は、まだ観たことはないけど、そのミニチュア版みたいかなぁ?なんて考えていた。 思う存分、氷を撮影し終わると、また、岩を越えて滝に近づこうとするわたし。。。(^_^;) 大岩に上るのに、転がっていた丸太のような木の枝を立てかけて足がかりにしてよじ登った。 すぐ、間近に滝があった。轟々という水しぶきが飛び散ってわたしにも届きそうなくらいだ。 小さな滝だけど、凄い迫力だなぁと思った。流れ落ち岩に叩きつけられた水しぶきと、その脇に下がる流れの形のツララと。いくら観ていても見飽きることはない。 飛び散る水しぶき! ふと、水底を覗いたら、過ぎゆく季節の想い出が、降り積もっていた。 想い出は、胸の中で生きている。きっと、もう一度、春が来て、若葉の頃…蘇るよね。 流れはいつしか光と影の世界。深い藍色の夜空のように、キラキラと銀河になる。 大岩から、伝い降りて、枯葉の斜面に降り立った。しばらくその斜面を登ったら尾根に出れるのじゃないかと思えるほど、空が近くに見えた。 けれど、降り積もった落ち葉は深くて、わたしの膝まですっぽりと埋まってしまった。 歩くたびに、ガサゴソと落ち葉の海を泳いでいるみたいで自由が利かない。 もう、寝転ぶしかないでしょ! 気持ちいい!耳元でカサコソ、落ち葉がささやいてる。見上げた空に大きく枝を広げた巨樹が目にはいる。 立派な樹だなぁ…わたしは、起き上がり、落ち葉を泳いでその気の根元に立った。 太い根元は、幾本にも別れ、大地を掴んで根を張っていた。 この樹は何の樹だろう。すっかり葉を落としてしまってるし、分からない? でも、この樹皮で分かるかも知れない。縦に細かく切れ目がある。ミズナラかな? (お分かりになりましたら教えてくださいm(__)m) この樹の根元で、山ご飯にしよう!今日はコーヒーとサンドイッチに、マドレーヌのデザート付き。今日も、イマジンロックを眺めつつ、枯葉に埋もれて山ご飯。おいしい♪ でも…ちょっぴり、寂しいね・・・ 立ち上がったら、わたしの影が、枯葉の斜面に大きく映った。 影よ、逃げていかないでね。わたしと一緒に歩こう。 わたしは、来た道を戻ることにした。今日は倉沢ヒノキも探すんだもの。 降りてゆく坂道に午後の陽射しが零れて暖かな枯葉色に滲んで、一瞬、陽炎のように揺らいだような気がした。「夢の坂道は、枯葉模様の石だたみ…」ふと、口ずさんでいた。 川床は雪と石の白、流れの水色、綺麗な配色! アジサイの枯れ花も、穏やかな午後の陽射しの中 杉苔の胞子の森… アイスリンクの林道に差し掛かろうとした時、後ろから車がやってきた。 慌てて山側の路肩によけると、軽く会釈をしながら、黄色の派手なパーカーを着たハンターらしき二人を乗せて車は少しもスピードを落とすことなく、凍った林道を走り抜けていった。凄いなぁ、普通の車なのに滑らないのかなぁ? わたしも、カメラの電池切れになってしまったので、さっさと林道を下っていった。 Love Iceを、もう一度眺め、「溶けてしまわないでね」と、触れてみた。 少し名残惜しかった。すると、すぐ傍の谷側の木の枝に、鳥が舞い降りた。 最初、ヤマガラだと思った。どこかで、わたしを呼んでいる声がする。『びー、びー、びー』 懐かしい声だった。今年はいつもの週末の森でまだ出逢えずにいる… あの可愛い三色の頭、コツコツと木をつつく音、人懐っこく木の枝から覗く、つぶらな瞳。 去年の森での触れ合いが蘇った。「びーちゃん…」わたしは呼びかけながら梢を双眼鏡で探した。すると、ヤマガラもいたけれど、なんと、ジョウビタキの雄が枝先でこちらを眺めていた。 「ジョビオ!」思わず声に出して小さく叫んでいた。 (去年の写真:ジョウビタキの雄:ジョビオ) 銀色の帽子に黒い顔、黒い翼にオレンジ色の胸…おしゃれなジョウビタキの姿があった。 いつも週末の森へ行けば、逢えた…かならず、何処からともなく現れてわたしの後を着いて来てくれた。去年の3月、「また逢おうね。帰ってきてね…」と、約束して別れたのに、今年はまだ週末の森に帰ってきてはくれなかったね。思いがけなく、ここで逢えて嬉しかったよ。きっと、ジョビコも、どこかで元気にしているよね。 そう思ったら、愛らしいジョビコの顔が浮かんだ。「逢いたいな…」 (去年の写真:ジョウビタキの雌:ジョビコ) 林道の入り口に降り立って、少し歩いていくと、倉沢ヒノキへの登り口が現れた。 「ここだったのね。」今日こそは出逢えるんだ。わたしは、ドキドキした。 登りが15分と書いてある。時刻はもう、2時を回っていた。 わたしは、ためらうことなく林道の入り口を登り始めた。 もう、すでに山は夕刻が近づいている気配だった。道は、かなり急登でぐんぐん登っていく、下の車道が遠くなっていく、倉沢ヒノキはなかなか現れない、20分以上登ったところで、大きなモミの樹が現れた、これじゃないよね。。。心の中で呟きながらさらに登ると、突然、石垣が積まれている場所にでた。数本のモミの大木を従えるようにして、その中央に探していた倉沢ヒノキが奉られていた。 最初、それほどではないのかなと、感じたが、その根元に立って見て息を飲み込んだ。 「すごい!なんて立派な樹」思わず独り言を呟いた。その幹は、多分、大人が数人手を繋がないと回れそうもなかった。 天を突いて何処までも高く真っ直ぐに伸びているヒノキの姿に感動した。 電池切れで写真が撮れないのが残念だった。 根元から、横に腕のように伸びた幹があったので、そこに腰掛けて、その幹に触れてみた。 わたしは、足をぶらぶらさせながら、辺りをぐるりと見渡した。ちょうど山の中腹に立ってるので向かいの山の頂が見えた。おりしも、山々の間から夕映えの光が差し込んで頂はオレンジの暖色に染まりだしていた。ひとりで夕映えを待っていたら、さらさらと柔らかな風音が響いてきた。 それはヒノキの高い梢から降りてくる音だった。そっと、目を閉じてみると、何かしら、いにしえからの風音のような気がして、ますます、耳を澄ませてしまった。すると、音は、耳からよりも、胸の中に吹いていて、心で聞いているような錯覚に落ちた。 さぁ、そろそろ行かなくちゃ…わたしは、幹から飛び降りて、ヒノキの周りを一周した。 見上げれば見上げるほど立派なヒノキ。。。また逢いに来よう。待っていてね。。。 そして、夕陽に追いかけられるように一気に山道を駆け降りた。 巨樹ってやっぱり素晴らしい。屋久島の千年杉を見ることができたなら感動するだろうなとふと思っていた。屋久島には行けそうもないけれど、奥多摩なら来れるから、奥多摩の巨樹を探してみたいと思うのだった。車道に降り立ち、バス停に向かって歩き出すと、山は、急速に、夕暮れの切なさに包まれ始めていた…。 (長いお話を読んでくださった方、ありがとうございますm(__)m 電池が切れる瞬間に撮った、林道の奥にあった巨樹、これは何の樹だらう? どなたかお分かりになりましたら教えてください。
by sizukuh
| 2006-01-15 22:09
| Nature/自然
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